フランスで暮らすイラストレーター兼作家で、コミュニティメンバーでもある龍山千里さん によるエッセイ。完全には分かり合いきれない文化が違う人々との暮らし。それを「フィールドワーク」と捉え、観察する日々を綴っていただきます。


みなさま、はじめまして。

フランス在住の千里といいます。



現在、フランスに4年近く住んでいます。



Dgs phytreatの店主であり、こちらのコミュニティを主宰するカオリさんとパリで出会ったことがきっかけで、当時発信のお手伝いをはじめ、著書『ハーブではじめる    植物療法の手引き』では挿絵を担当させていただきました。



そして、まさかこの度エッセイ連載をさせていただく日が来るとは!



お話をいただいたときは(嬉し)驚きだったのですが、



マッキーさんが「誰もが自分が主役として生きる物語の編集長」とおっしゃっていたように、一人ひとりに存在する物語を自ら紡ぐ作業、そしてそれを他者へ共有するという循環に参加してみたいと思いました。





普段はパリ拠点の会社に週4日勤めながら、傍らでイラストレーター兼作家として作品づくり、また繊維関連のライター業も専門紙向けに時々やっています。



日本で過ごした二十代は「布」をキーワードに兵庫の織物産地で働いたり、大阪のテキスタイルデザイン事務所に弟子入りしたり、好奇心のままに動いていましたが、そのさなかでいつの間にか自分のほんとうの意思を少しおろそかにしていた節がありました。



自ら荒げた波に疲れて、まずは一端休憩して自分を癒そう……と色んな知恵を探していた時に、カオリさんのハーブの発信に出会いました。



そんなタイミングで今の仏人パートナーとも縁があり、フランスに来てみることとなったのです。



・・・



数日前に日本から遊びにきた友人にも聞かれた、度々受ける質問が

「日本からフランスに移り住んで、変わったことはあるか?」というもの。



その時は「社会的に圧倒的マイノリティになったこと」と答えました。



少し前はそこに少し後ろ向きなニュアンスがあったのですが、最近ようやく(というか今週の通勤中の朝、まさに)「ああ、私はフランスに住む外国人なんだ。ずーっとそれでいいんだ」と腑に落ちた瞬間がありました。



当たり前じゃないかという感じなのですが、そのあと自分は「そっか~それでいいんだ~」と足取りが軽くなった。



この4年間は言葉の壁も相まって、文化の違いに毎日戸惑い、いつも体が少しこわばって緊張していたと思います。



ただ、いくらフランスの習慣や言語に対して理解を深めようと、一生フランス人にはなれなくて、そのどうにもならない溝を埋められないもどかしさを手放して、そのかわりに彼らと向き合い観察しながらコミュニケーションを続けていけたら、それだけでよいのかもしれないとふと思えました。



そのスタンスをぴったり表すのが私にとっては「フィールドワーク」です。





これまたとつぜんなのですが、わたしは学生時代、社会学を専攻していました。当時所属していた研究室について自分で記した十年以上前の紹介文が、グーグル検索したら出てきたので(ネットは時々おそろしいタイムカプセルですね……)引用してみます。





研究領域キーワード
コミュニケーション、コミュニティ、生活者調査、フィールドワーク、定性的調査法

どのような研究をしているのですか?
わたしたちは、コミュニケーションという切り口から「場」について考えることをしています。自分の足で現地を歩き、そこに暮らす人びとと接することで見える物事を、ていねいに採集することに重きをおきます。(中略)それぞれの環境で生活を営む人のすがたに学ぶことは多く、そこでの体験は何にもかえがたいです。出会うものに対する捉え方や意味を多様な視点で考え、再び現場へ出かけることをくり返し、「場」の在り方の認識を深めていきます。





フィールドワークにのぞむときは観察する立場からもう一歩内側へ入りこみ、そこでの人との出会いで得られる経験に重きを置き、しかし現地には染まらないという距離感を保つ「参与型観察」をしていたことを思い出しました。



まさに自分の生活へこの姿勢を落とし込めるのでは!



こういう切り口で「よそ者」の在り方を肯定的に語れるのかと、今更なことに目から鱗でした。



かつて、同じ研究室だった二つ上の先輩が新社会人になったときに

「仕事つらい。でもフィールドワークだと思えばやっていけるナ~」

という旨をツイッターで呟いていました。



今、私は呟きたい。



「フランス生活はたまに意味がわからない。でもフィールドワークだと思えばやっていけるナ~」。



みんなそれぞれ置き換えられる単語があるでしょうか。



半歩下がって生活を観察すると、実は事件こそユーモアを含み、受けた痛みにも自分という輪郭を縁取るヒントがあるかもしれない。



そんなフィールドワークの日々をフランスよりライトにお送りしていきたいと思います。





龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、フランス在住。テキスタイル業界で働いた後に渡仏。パリで半会社員生活の傍ら、コラージュ制作やデザイン、記事執筆。
instagram @chisato_tatsuyama



【編集部より】

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