フランスで暮らすイラストレーター兼作家で、コミュニティメンバーでもある龍山千里さん @ttymcst によるエッセイ。完全には分かり合いきれない文化が違う人々との暮らし。それを「フィールドワーク」と捉え、観察する日々を綴っていただきます。



これを書いているとき、フランスは議会選挙、東京は都知事選挙で盛り上がっていました。それぞれの結果も出た頃で、どんな心持ちでしょうか。



幼い頃は、いつか社会のことが広く深く分かるのだろうと思っていましたが、正直十代、二十代前半はあまり政治に関心がありませんでした。だから、社交のツールとして、時にはとことん友人や家族と議論する主題として、政治を語るフランス人を目の当たりにしたときはおどろきました。





(初対面の人とも二言目には政治の話題を持ち込むといっても過言ではない彼らですが、友人に理由を聞くと「(政治の話題は)生まれや仕事、プライベートに踏み込まなくてもよいけど、その人の考え方も知ることができる」かららしいです)

 

 

そんな平和ボケしていた自分でも、生活と政治が深く関わり合い、今に落ち着いてはだめだと思う危機感のようなものを持つきっかけが二十代後半にありました。



友人の相談を受けたり、人と出会うなかで私の場合は、身体にまつわる権利について考えることが増えました。



「えっ、女性の生殖の権利ってそんなに制限されているの?!」と驚いたんです。例えば、産むことも、そして産まないことも女性自身が選択できて、その権利は公平に存在するものだと思っていたら、そうではない側面も知った。

 

色んな点で思うことはあるのですが、ライトな例を挙げると、たとえばアフターピル(緊急避妊薬)を薬局ですぐに買えないこと(そして日本は高い!)、のぞまない妊娠を避けることを目的に服用するピルは保険対象外であること……などなど。



「いつか欲しいけど、今じゃない」と思う女性にとってあまり優しくないなと、社会で仕事を頑張りたかった時節に思うことがありました。



「こんなにも国ごとに取り組みや政策が違うのか~!」と他の国との比較を重ねては驚き、日本人として声を重ねていきたいと実感を持った初めての経験だった。日本を今うごかす人たちがどんな家族観やジェンダー観を持っているのか知るきっかけになり、政治と真正面から向き合うチャンスにもなったと思います。

 

自分が日本の法の下生きているんだな、、という大きい枠組みの存在を意識して、その時から少し変化があったかもしれません。

 

学校でも会社でも、政治の世界でも、多数決で色んなものごとをこれまで決めてきたけど、少数派の見逃してはならない真実があるなって、ちょっと大げさなことばだけど、初めてちゃんと思いました。

 

もっと自分の生まれた国が生きやすくなったらいいな!wellbeingな環境になるといいな~という希望をたやさずに持ちながら、日々を過ごしたいなあ、とあらためて感じます。

 

「女性の生殖の権利」について(編集部より)
 
日本では男女共同参画基本計画(2000年)にて、「性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」を「女性の人権の重要な一つ」と定めています。産む・産まないを選ぶ自由や、安全で満足のいく性生活を課題に挙げていますが、同時に同計画には「中絶の自由を認めるものではない」とも盛り込まれています。
避妊や中絶への選択肢やアクセスが限られている、中絶に関して配偶者の同意が必要とされるなど、数多くの課題について改善を求める声も上がっています。


(2024/08/03公開)


龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、フランス在住。テキスタイル業界で働いた後に渡仏。パリで半会社員生活の傍ら、コラージュ制作やデザイン、記事執筆。
instagram @chisato_tatsuyama





【編集部より】

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