フランスで暮らすイラストレーター兼作家で、コミュニティメンバーでもある龍山千里さん @ttymcst によるエッセイ。完全には分かり合いきれない文化が違う人々との暮らし。それを「フィールドワーク」と捉え、観察する日々を綴っていただきます。
夏は義両親の住むブルゴーニュ地方で10日間ほど過ごしました。
いろんな理由が重なったのですが、はからずも(自分的には)なかなかの中期滞在。過去は最長3泊だったので、到着した瞬間に「おや、大丈夫カナ」と若干不安もよぎりましたが、気持ちよく迎えてくれて、思っていたよりも快適に過ごすことができました。
彼らが何を食べるかもここ数年でだんだんと分かってきたので(豆腐は好きだけど海藻は嫌いなんだなとか、日本のカレーはわからないけどオムライスは可なんだなとか)、彼らの生活のリズムをあまり崩さないようにしながらも2日に1~2食は好き勝手に作っていました。
ズッキーニのチヂミ(好評)、野菜ビビンバ(大丈夫)、サーモンアボカド丼(saumon frais fumé:フレッシュスモークサーモンという素晴らしい食材を市場で発見したおかげで成功)、卵のおじや(日本ではまずもてなす為に作らないのでためらったが、皆胃腸が疲れていたので合格)と、そのほかサラダなど。
ごりごり出汁とごま油ベースでも、みんな結構食べてくれるので面白かった。
料理へのこだわりは強くはないが、段取りと素材の下準備で頭の中を満たしてくれる(且つ、成功すればおいしいものが食べられるというご褒美付き)ので、そのプロセスにとても救われました。今の私はひたすらにんじんを千切りする時間が必要だった。
というのも、
8月に入って人生が急カーブに突入しました。
まだそのカーブを曲がってトンネルを直進中なので、あまり明確なシェアができないのですが、否が応でも立ち止まる必要を感じて(頭というよりもからだのほうが正直でした)自分自身おどろきと戸惑いが少しあった月初でした。
そんな状況を知ってくれた友人のすすめで坂口恭平さんの『生きのびるための事務』という本を読みながら、しばし人生の棚卸作業をしていました。すごい実用的で!「龍山さんって以前自分で ”勤め仕事をしない生活が想像できない” って言っていたよね!」と以前パリで再会した香織さんにふと言われたことを思い出したのですが、そうなのです。怖い!独り立ちなんてできるか!とアイデアもなかった自分ですが、本を読んで自分の支出と収入を見直していくと、近いうちにそれが可能な気持ちになってきました。
未来のことを考えざるをえないタイミングで、それでもグルグルしていたのですが、ある朝に義母と市場で買い出しをした後の喫茶タイムで「なんかもう人生、いま全部が思い通りのスケジュールに行かないからすごくストレスだ……」とこぼした私に「そりゃそうだ」と当たり前のフィードックをくれました。
「なるようになる。自然の流れに任せる。大きなフローに身をおくだけでいい」と言われて、思わず泣きました(みんな大注目の朝のカフェ現場)(バレているかもしれませんが、よく泣く)。
そんな義母が作る料理はというと、オーブンを上手に使って、ゆっくりと火を通す時間の加減でおいしくなるものが多いです。野菜を切って、スパイスとハーブをぽいぽいって入れて(ちゃんと考えているのでしょうが、私にはそんな風のよい適当さを感じる)ぽいっとオーブンに入れて待つ。そしたら自然とうまみたっぷりで美味しくなっている。こちらの人たちのオーブンとハーブ使いには驚きです。
そういう部分を自分にも取り入れたいなと思った時間でした。
(2024/09/04公開)
龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、フランス在住。テキスタイル業界で働いた後に渡仏。パリで半会社員生活の傍ら、コラージュ制作やデザイン、記事執筆。
instagram @chisato_tatsuyama
【編集部より】
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