編集担当・マッキーによる連載です。本や雑誌をつくる「編集」の視点を、日々の暮らしに落とし込む試みをお届けしていきます。vol.9では、ですます調をやめてみました。



どんなにのんびりしているのだと呆れられると思うのだが、2024年の年末である現在、昨年の11月から約1年ものあいだ「どうするの、どうやるの」と頭の隅で囁かれている個人的課題がある。


“(都市部に暮らしている)みなさんの暮らしは、
循環を止めていないと言えますか?”


「パーマカルチャー」という循環型の農と暮らしのデザインを実践して生活と生業を行っている方からの問いかけだった(あ、あの人ねという人も多いかもしれない)。

しかもそのときに私が立っていたのは、ふかふかで、ほどよい温度で冷えた足を温めてくれて、匂いも全く気にならない、完璧なコンポストの上だった。彼が家族とともにとても可愛がっていたヤギも眠り、彼らの食をつくる土へと繋がっていった場所だ。

いのちの循環が本当の意味で行われているふかふかの上に立ちながらの問いかけは、私にとってはちょっとした詰問だった。

まぁその後に、「子どもを産んだ人はそれだけで繋げていっていると言えますよね」という言葉があったのもあるけども(←誰かに言いたかったから書いちゃう!)。


農・食・自然環境、そしていのち。そういった意味では「止めている」という認識は、問いかけられる前から確かにあった。

どんなに味噌を手作りしようと、梅や柿や芋を干そうと、それは全て我が家でストップする。だったらと、環境や他のいのちに少しでも悪影響を与えないものをと何かを買うときの選択条件としても、何かを生み出し繋げているわけではない。


都市部にいて田舎のような暮らしを目指しても、大きな循環に乗ることはできないのではないか。そんな話の流れであった。



話は飛ぶが編集者には、いくつかのタイプがあると思っている。

ブームを生み出したい人、何かを発掘したい人、素晴らしいと感じたものを誰かに繋ぎたい人、好きを形にしたい人、その他いろいろ。

私はブームを生み出したいわけではなく、発掘は好きだけどあまり得意じゃなかったりする。後の二つの欲望が強いタイプだ。

ひとつの業界の中で長く働かせてもらっていたこともあり、今でもその業界の仕事をする時は、繋ぐ意識がとても強くある。すごい人を、美しいものを、埋もれてほしくない努力や成功の物語を、尊く究められた理論や思考を……次世代へ繋いでいこうという意識を密かに持ちながらゆるゆるとえへえへと仕事をしている。

お声がけすることから始まって編集を担当させていただいた、カオリさんの著書『ハーブではじめる 植物療法の手引き』も、それこそ好きから始まり、カオリさんの持っている知識や理論を繋ぎたくてあの形の本になった。

伝える、は、繋ぐ、と捉えても許されるのではないか。

つまり編集やライターとしては、繋ぎ続ける循環の風に乗ったり、起こしたりできているような気がしないでもない。



そう、繋ぎ続けるものは、別に彼が言っているようなもの(食や農・環境・いのち)だけじゃなくてもいいはずだ。

だけど私はこの1年、どうにかしてこの東京の、大きな木のない町で暮らしながら、彼が言うほうの循環に乗りたいと感じている。仕事とは別のかたちで、いち動物として何かを繋ぐ循環に乗りたい。たぶんとてつもなく緩やかに子どもを産まない選択をした私の動物的欲望と少しの罪悪感、そして森暮らしを夢見ながら土のないエリアに暮らす者としての負けたくないなどが、そう思わせているようだ。


さて、私は、私たちは、今暮らす土地、生活の中で何をどう繋ぎ続けることができるのだろうか。

何か形があるものを作らなくても、知識でもいいし、きっと優しさでもいい。人と人を繋ぎ続けるのもとても素敵だ。

以前、こちらのコミュニティの投稿で、種を採って、植えてまた育てて繋ぐというお話を書いてくださっていた方がいらっしゃり、その循環が自宅のお庭の中だけで行われていたとしてもそれは確かに繋げている行為だと感じた。

先日のコミュニティの座談会でカオリさんがご自身を「初代」と話していた。それも繋ぐ、ということだと思う。


あと数日で終わる2024 年。私の「どうやるか」の課題は、また来年に持ち越されそうである。

みなさんは、来年とその向こうへ、何を繋いでいくのだろう。繋いで行こうと考えているのだろう。

ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。


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環境の循環という意味で、今年の冬は生ごみを乾かすに挑戦しています(コンポストは間違って貝を入れた時点で諦めた&大根やきのこなど食べるものも干してるよ🍄)。

これは別の方からですが、生ゴミの水分量の多いとゴミの量が増えるだけでなく、最近ではゴミ処理場で燃やすゴミが燃えにくくなってしまい燃やすために石油をかけることがあると聞いたので。

ハーブは乾かすと風で飛んでしまいそうで、まだドライに戻していません。いけるかなぁ。



福田真木子(ふくだ・まきこ)
Phytreatweb編集担当。フリーランスの編集者・ライター。美容専門出版社を経て、独立。美容、健康、暮らしジャンルを中心に活動中。ガロンカオリの著書『ハーブではじめる植物療法の手引き』の企画・編集を担当。