連載開始と同時に一人用のボートで海へと漕ぎ出したパリ在住の龍山千里さん @チサト 。エッセイ「ボートを漕ぐ道すがら」では、ボートの内と外を巡らせて浮かび上がるその時々の心象風景を綴っていただきます。毎月、創作してくださるエッセイの挿絵もお楽しみに!



ありふれた心境の変化ともいえるのだろうが、三十代に入ってからこどもを産むかもしれない人生を意識するようになった。

二十代のころは、それこそ不思議で仕方なかった。三十に近づくにつれて増えまくる友人の出産。結婚と子どもが当然のようにセットの親世代の価値観。子どもがほしい!と思ったこともなければ、絶対いらない、という意志もなく、以前はそういうことを考えることすらなかった。

それが夫と出会い結婚して、対話を通して考えも少しずつ変化してきた。時に夫婦間でも描く家族の未来像の違いに戸惑うことはありながらも、まあなんとなく縁があればそれも人生か……と思うほどになった。これは私のなかで大変化だ。

今年のはじめまで会社勤めをしていたとき、やっている仕事は正直ピンときていなかったが、人間関係と労働環境にはとても恵まれていた。フリーランスで働き始める前、サラリーマンである間に子どもを産んだほうが、精神的にも経済的にも安定するかも……という下心がでてきて、辞める前に子どもを産もうと企てたことも一時期あった。すぐに「この動機は、自分にとっても会社にとっても誠実ではないな」とそれは却下されたのだけれども。

そのとき、初めて子どもを持つ人生に、かなり意識的になったともいえるが、正直あとから思い返すと、ただ仕事を辞めるきっかけがほしかっただけのようにも思える。

その後も「子どもがいる人生もわるくないか」とは思って生きてはいるのだが、思うようにいかないのが現実。なるほど、はかってできるものではないのか!という超当然な、自然界と生命の神聖さと向き合っていた(スケール大きいが本当にそうなのだ)。

ここ数年、友人知人より「ほしいのにできない」という悩みを聞いては「そういうものかね」と思っていたのだけど、やっと彼女たちの言っていたことがわかった。生理が何日か来ないと期待して、来ると凹む。

このサイクルを毎月やると疲れてくるわけで、生活のなかでエネルギーを漏洩させている気がして、いい加減やっと目が覚めた。

そんな初夏なんです!赤裸々すぎでしょうか。

でもなんか、恥ずかしくもなく、これってとてもリアルで、ありふれたことのような気がして。もしくは昔の自分のように、これを読んだところで「そういうものかね」と共感できない女性もたくさんいるだろうし。面と向かって誰かに話すと困らせるかもしれないのですが、プライベートだけど一般的なことだな~と思いながら綴っています。

一方で、私がなぜこれを今回書こうとしたかというと、できない話を書きたかったのではなくて(むしろ悩んでいたら、ここに書けていないと思う)。

実は「今月はきたかもしれない」という期待があるとき、生理が盛大に遅れるという現象がこれまで何度かあり(たとえそれは真実ではなくても!)、その確信度に比例して、開始日が遅れるという、脳と体のシンクロ具合に感動している……という話を書きたかったからなのです。いわゆる、想像妊娠である。

くるかな~、こないな~、もしかして……!と。いや、でもそういっても明日くるかもだしな……ん~?!という、その流れに身体はとても正直なのだ。夫もだんだんと慣れてきて「思い込みで、身体がすなおに反応するっていいことだと思う!」と言われるまでに。

でも、私も本当にそう思った。

なんの憂いもなく、ただ純粋に、これは人の色んな面でいえることだなという気づき。

心の変化に身体は思った以上に機敏で従順だった。

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だからきっと「私は病気だ……」と思えば、きっと病気は進行していくし、「絶対健康だわ!」と日々確信していれば、そういうふうに流れていくんだろうな。

思い込み次第で、病気が治ってしまうことだってあるかもしれないと思うほど、意識が身体に与える影響の大きさってすごい!!という感動と驚きがあった、この頃でした。



龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、2020年よりフランス在住。日本の織物産地でテキスタイルデザイン職を経て渡仏、2024年秋よりフリーランスとして活動を開始。コラージュの手法を用いてイラストレーションやデザインを制作する。
instagram @chisato_tatsuyama 



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