連載開始と同時に一人用のボートで海へと漕ぎ出したパリ在住の龍山千里さん @チサト 。エッセイ「ボートを漕ぐ道すがら」では、ボートの内と外を巡らせて浮かび上がるその時々の心象風景を綴っていただきます。毎月、創作してくださるエッセイの挿絵もお楽しみに!



「自立」とはなにか、というアイデアが揺らぎ、少し視点が変わった二月でした。


ずっと「一人で生き抜く力」だけが自立だと思っていた。でも実際は今までの人生のなかですでに、色んな人との出会いに育ててもらってきたのだから、片面ではとても傲慢な考え方だったな……と、思うきっかけがあったのです。

そして、身近な人にはこのタイミングで「頼ることができるのも自立なのだよ」と教えてもらった。

ジブンと夫
ジブンと両親
ジブンと友人

これらの関係性のなかで「自立とは」をテーマに数日過ごしながら、一冊の本を読んだら「本当の自立には“親切さ”がなによりも大切だ」という結論に至る一節を目にした。何を突然、そんな性善説で世の中が回ったら苦労しないよとも思ったり。

でも一方で、親切さがない自立っていうのはつまり「一人で生き抜く」ことにも通じていて、「何かを一方的に得ていく」姿勢であり、それこそなんかやっぱり無理があるというか、不自然だよな……と思い、その時の自分には妙に響きました。

自分が役に立てる事柄をわかって、それをもって他者に「親切」ができるとき=本質的なものを生み出していくことで、それが巡り巡ると、すこやかに双方が自立して生きていけるのかなと。そういう植物のような循環の仮定を知って、腑に落ちた部分があったのです。

そして、親切なら今日から実践できる!とも。

とゆーても、めっちゃ小さなことで、

喫茶店でお菓子を食べて、帰り際に「あれとてもおいしかった!」としっかり作り手に伝えたり、喜ぶかな、迷惑かな、ま、喜ぶか!とささやかな時間を作ろうとひとに働きかけたり。

ひよこ並みですが、そういうことの延長に、世のお仕事だってあるよねって、ふと思いました。

あとはその後に、皆川明さんの著書『生きるはたらくつくる』を読んでいたら、かつて働いていた綿織物の産地のつながりで、皆川さんご本人と食事の席が隣になったときのこと思い出して。

当時、会社を辞めようと思うと相談した私に「人は社会とのつながりのなかでしか生きていけない。そういう意味で見習いの時期というのは大切なのだよ」と言ってくださった。それは軽い言葉ではなかったから、時間を越えて咀嚼しつづけていたけれど、ただ「ここに残れ」と言いたかっただけではなくて、これからどんな道を進もうとも大事だから覚えておきなさい(今はわからんかもしれんけど)ということだったのだと、やっとわかってきた。

彼の言うこれも「自立」だ。

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そして「自分で自分を満たす方法を知っている」。それも自立であり幸せだよねっていう原点にも戻った今月。自分の心とからだの器を満たす作業です。

そういう点では自炊って手っ取り早いなと思いました!(突然)

私は超~手抜きをしたいとき(頻繁にあります)、ただ野菜を20~30分煮たあとミキサーにかけて、適宜牛乳などを混ぜた大量のポタージュを仕込んで、パン屋で買ってきたバゲットで朝も昼も夜も済ませる。冬はめっきりキャベツかバターナッツが主役、ここに玉ねぎ、じゃがいも、あとは気分でキノコや蕪など残り野菜を放り込む。パン食文化に甘んじると、この朝食のようなメニューが三食いつでもいけちゃう、そしてやさしくておいしい。

あとは豚汁ならぬ鶏汁(しかもささみ、でも結構うま味出る!)。とにかく汁物のやさしさがすごい。

そう、そして久々に(!)ハーブとお茶を点検しました。普段は生理ケアなどピンポイントにしか取り込んでいなかったと思い、セルフケアのキホン、薬箱をチェックすべし……と思い立った。

ネトル、バードック、シベリアニンジン、ヤロウ、ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、バレリアン、そのほか兼調味料としてシナモンとカルダモン、クローブ、スターアニス、生姜。お茶はルイボスティー、ハト麦茶、そば茶、ほうじ茶と、チャイティーのティーパック。ハーブは基本メンテナンスができそうだ!と、先週からしばらく朝続けている。これも自分を自分で満たせる、簡単な方法だったよと体感している。

生活のなかで自分をご機嫌に保つ調整を少しずつしながら、おおらかに、良い生活ができています。


「頼る」ということにおいてはそういえば、音楽に詳しい、親しい友人に「わたし用にプレイリストを作ってくれ~!」と突然のお願いをしてみました。前の自分だったらこんなことも、忙しいだろうな~と気軽に聞けなかった。でも、なんか日々に新しい風がほしかったから、頼ってみようと。

そして、これがとっても良かった……。

音楽のレパートリーが10年前から7割くらい変化なしだったので、久々に刷新された曲の面々、しかもそれは私のことをイメージして友人が一曲ずつかろやかに集めてくれたものというのが、ハイパー癒しになりました。

SpotifyがFOR YOUプレイリストを組んでくれるのとは、また全然ちがうのですよね。もっと私的であたたかいものだった。



龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、2020年よりフランス在住。日本の織物産地でテキスタイルデザイン職を経て渡仏、2024年秋よりフリーランスとして活動を開始。コラージュの手法を用いてイラストレーションやデザインを制作する。
instagram @chisato_tatsuyama 



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