編集担当・マッキーによる連載です。本や雑誌をつくる「編集」の視点を、日々の暮らしに落とし込む試みをお届けしていきます。ほんのりリニューアル☆
こんにちは。Phytreatwebのマッキーです。
8月は「出したものをすぐに片付ける」という、とてつもなく小さなテーマで暮らしていました。連続して複数の人との会話に出てきた、人によっては当たり前でしかないこの習慣。
暮らしの実験はこのくらいの小ささから始めてもいいかなと思ったのです。
ですが前提部分で問題もあって、そもそも片付ける場所が決められない、入りきらない。しょっちゅう「はて?」となったまま、置き去りにされたものたちがわいわいと主張してきます。
聞いた話ではイギリスの良いご家庭(どういう意味で“良い”なのか不明)では、キッチンにヤカンひとつでも出しっぱなしにするのは許されないそう。
いつでも部屋をすっきりさせておく。
それが心をクリアに保つとともに、集中力を高める秘訣だと教えてもらいました。それは手放しで納得できる。やっぱりすっきりした部屋は、気持ち良いですもんね。
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でもさ、混沌も悪くない。むしろ良くない?
困ったことに、今、そんなモードにもなりつつあります。矛盾発生!
矛盾といえば、先日、久しぶりに古巣の先輩に会って話していたときのこと。ああだ、こうだ仕事の話をしていて、たどり着いたのが「私たちの仕事って、良くも悪くも矛盾だらけ」ということでした。
効率化を勧めながら、非効率にしか生み出せない味を捨てたくない。求められたい、でも求められることだけを善としたくない。
先輩とやりとりをしながら、思ったこと。矛盾こそ、私たちが人間である証なんじゃないかなぁ。
そんななかで最近、映画『大長編 タローマン 万博大爆発』を観に行ってきました。
「芸術は爆発だ!」の岡本太郎の言葉の作品をモチーフにした、でたらめ万歳、べらぼうな世界観の『タローマン』。NHKで放映されていた頃から、この世界観にハマっていて。(観た方、知っている方、いるでしょうか?)
岡本太郎の言葉をつかってストーリーを構成しているこの映画は、笑ってしまうほどの力技。だって「うまくあるな きれいであるな ここちよくあるな」と岡本太郎も言っているから。
敵か味方か、正義か悪か。考えているのか、思いつきなのか。
さっぱりわからないタローマン(岡本太郎の思想を体現した巨人)の行動。そして岡本太郎の言葉は、「矛盾」をきれいに整えなくても良いと、あの手、この手で言っていました。
でも決して優しいわけではなく、ありのままでいれば良いと言ってくれているわけでもなく、けっこう厳しくあるのが岡本太郎。
「怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」。
それは矛盾を抱えたままに、進みきれと言っているようでもありました。
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矛盾とは、ぶつかり合い。
だけど、ぶつかり合うどれかだけを生き残らせるのが、本当に正解なのでしょうか? 私たちは人間だから、自分にとっての真実も信念も、進みたい先も一つじゃなくて当たり前です。
それなのに自分のなかの矛盾をなくすということは、それらを1つに絞ったり、ぶつかり合う全ての棘を丸く削ること。もしかしたら私という人間や人生を、なんだかつまらなくしてしまう可能性もあるのではないでしょうか。
人から、そして自分からも「はっきりして」と言われることがあるかもしれません。
だけど、ぶつかり合うそれらを無理に一つに絞って、他の真実をなかったことにするのではなく、
その混沌に潜って揉んで、矛盾そのものを抱えながら、いつか自分だけの在り方に練り上げていくのもありなように思うのです。
今はこっち、次のステージではあっち、という方法かもしれないし
しなやかに矛盾全てを包み込む方法かもしれない。
こうしたらいいよというやり方はわからないけれど、矛盾を抱えて生きること。それは決して、妥協じゃない。そんなことを考えていた、最近です。
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とはいえ、部屋においては矛盾だらけの出しっぱなし、というわけにもいかないわけで。
好きなものは好きな感じにごちゃごちゃさせながら、特に思い入れがないものはきちんと仕舞う。出ているものは見るたびに「やぁやぁ」と声をかけてにんまりする、に落ち着きそうです。
「人間の生活は矛盾だらけだ。それに耐え、そのマイナス面をプラスの面に転化してゆくこと。それが創ること」と、岡本太郎も言っていました!
🐣ここに引用した岡本太郎の言葉は、映画からの覚え書きおよび、『壁を破る言葉』からです
🐣『大長編 タローマン 万博大爆発』はカテゴリー的には思いっきりB級映画! 誰もに刺さるから絶対に観て!とは言い切れません〜
福田真木子(ふくだ・まきこ)
Phytreatweb編集担当。フリーランスの編集者・ライター。美容専門出版社を経て、独立。美容、健康、暮らしジャンルを中心に活動中。ガロンカオリ(梅屋香織)の著書『ハーブではじめる植物療法の手引き』の企画・編集を担当。