連載開始と同時に一人用のボートで海へと漕ぎ出したパリ在住の龍山千里さん @チサト 。エッセイ「ボートを漕ぐ道すがら」では、ボートの内と外を巡らせて浮かび上がるその時々の心象風景を綴っていただきます。毎月、創作してくださるエッセイの挿絵もお楽しみに!



この一か月、とある連絡を辛抱強く待っていた。それはもうひたすらに……。色んな理由があって詳しくは書けないですが、経済的なことも関わっていたから一時は結構ナーバスになってしまっていた。

そのうちに悲しさが怒りに変わりそうになったりもしたのですが、

いやちょっと待て。

たしかに、その人からの連絡を心の底から待っているのだけど
私は何か待たせていないか?

と自分に問うたところ、

待たせていたのだった……。


待っている相手や案件とは全くもって関係なく、さかのぼること約1年前。怒涛のクライアントワークラッシュ時に旧友から家に飾りたいと絵のオーダーをもらっていた。途中までラフ案を出したりもしていたのですが、どうも先が進まず(こんなことは初めてだった……)おそろしいほどに月日だけが経ってしまっていました。

蓋をするほど、着手がむずかしくなる、学生みたいな癖が今もあったのですね。。
反省でした。

待ってくれたことへの感謝とか、純粋な楽しさとか、等身大の今をうつして4枚の絵をやっと作った。

そして12月7日に完成の報告を友人へ連絡。

すると12月9日に、2か月間以上首を長くして待っていた連絡がポッと来た。

たまたまといえばそうかもしれないのですが、やっぱりなんか不思議だな、と思いました。



また、別方向でも待たせてしまっていたテキスタイルの案件を思い出して(静かになると、わっと色々湧いてくる……!)こちらは特に締切りは決められてはいなかったが、時間ができたからそちらもいそいそと作り始めたり。

出来上がったテキスタイルパターンは、暇だしせっかくだからテーブルナプキンにしてみようと印刷発注+怒涛のミシン作業をしたり。それを先日パリのクリスマスマルシェで売ったり。

そういう一か月を過ごしていました。

マルシェは通りすがりの人が多く、自分のことを知らなくても「なんかいいね!」と直感的に買ってくれることへありがたさと喜びを感じて、癒された。

この一連の流れのなかで、クライアントワークにもひとつ区切りがついたかもしれないと思いました。

この3年間、ゆるやかにいつも何かデザインのオーダーやコラボがあり、それが励みとなって勤め仕事も制作も続けてこられたし、経験も重ねられてきた。その一方で、受注仕事はいつになってもなかなか安定しないなという悩みもありました。

「それなら自ら作って売っていくことも並行ですればいいじゃないか」と、そういう舵切りが凪のなかでできたようなここ数日。

ふと手が空くと、布ものへと走りがちな自分は、布が結構好きなのかもしれない、ということもあらためて気づくことができて。テキスタイルプロダクトを来年はもっと充実させてみようかなとざっくりした方針も決まった。

物が溢れる時代だからこそ、作ることには臆病になっていたのですが、それにも愚直に向き合っていきたいと今は思う。

フランスで結婚時、私は自分の姓をそのまま引き継いだのですが、なんとなくこの先ブランドをやるならば私ではない別人格を与えたいなと思い、夫の姓を借りて「SALVADOR CHISATO」というブランド名にしようかな?とふと唐突に思いついた朝がこれまた数日前。

いや、名→姓の順番で「CHISATO SALVADOR」なのかな?!

と結構今の段階では決め切らなくてもいいことで云々唸る。

夫にどちらがいいか聞いてみたところ「歌ってみるといいよ」とのこと。

どういうこと?!

「小学校のとき先生が、選択肢のうちどちらがいいかわからないときは、それを歌ってみるといいって言っていた」と。からだは答えを知っているのだそう。だから歌うとどっちがよりしっくり来るか、体感でわかるということだった。

妙に納得してしまった私は「サルバドールチサト~    チサトサルバドール~♪」とドレミファソ周辺の音階に合わせて何度か歌唱。


そして「SALVADOR CHISATO」がより良いかな、という結論に至りました。


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この絵は友人宛てに絵を制作する前に、リハビリで作りました。

気分だけはもう新年 ウィズ 日本酒(おいしいお酒が恋しい!)です。。

今年も大変お世話になりました。
ここで出会う方々の発信に、自然の知恵とか日々の力を分けていただいています。

来年もこのphytreatwebでどうぞよろしくお願いいたします!
よい年末と新年をお迎えください。




龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、2020年よりフランス在住。日本の織物産地でテキスタイルデザイン職を経て渡仏、2024年秋よりフリーランスとして活動を開始。コラージュの手法を用いてイラストレーションやデザインを制作する。
instagram @chisato_tatsuyama 



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