連載開始と同時に一人用のボートで海へと漕ぎ出したパリ在住の龍山千里さん @チサト 。エッセイ「ボートを漕ぐ道すがら」では、ボートの内と外を巡らせて浮かび上がるその時々の心象風景を綴っていただきます。毎月、創作してくださるエッセイの挿絵もお楽しみに!
太陽の光の暑さと、空模様の気まぐれにふりまわされながら、夏ですね。
私は「腹決めよう!」と踏ん張った7月上旬でした。
とにかく夢中で必死だった……!が、結果的に等身大の自分を出し切れました。
(それにまつわる、ちょっとおもしろいお知らせが8月くらいにできると思います!)
パリではじめて個展も開きました。
住んで5年が経ち、色々二の足踏んでいたのですが(やっても来てくれる人おるんかな……とか、何かとやらない理由を探す、石橋叩きまくって壊すタイプです)いやいや、開くことに意味がある!という精神で軽やかに場所をポーンと借りて、パーンと開きました。やると意外と大胆に進むのが自分のいいところ……。
結果、こちらの生活でお世話になった人たちが思った以上に足を運んでくれて、どれだけの人に支えてきてもらっていたかを確認する大切な作業になりました。
ほかにも「インスタをみて来た」という人もちらほら、ふらっとたまたま立ち寄ってさくっと作品を買ってくれる人もいました(驚)
数年前までは仕事になるとは一切思っていなかったコラージュで、こうして人と繋がり合える場をつくれていることも素直にうれしいし「まだまだ、できることあるな!」と動き出したら回り出した夏のはじまり。
ところで、私の絵は抽象と具象を行き来しており、特にモチーフを定めていません。
「色」を組み合わせることで絵をつくっている感覚なので、つい抽象によってしまいますが、山とか花とか、それこそ香織さんの書籍のときのように、お仕事や気分によって、自分なりの解釈で具体的なモチーフをつくるのも楽しい。
なので、それは時に「アート」と「イラスト」のはざまを揺らいでいるともいえる。
表現側に観る側が寄っていくのか、観る側に表現側が寄せるのか、という境界です。
だからイラストのコンペにも、たまに作品を送るようにしているのですが、正直「本当に自分が戦える場かな?」と思いながら、でも続けています。
イラストレーションの世界は、デジタルメディアが定着してからいっそう流れが速く、一度使われて注目された人はすぐに売れっ子になり、その一方で流行の波がおさまるのも速い印象。いまや色んな人が活躍している、レッドオーシャンだと勝手に思っています。
とあるコンペの審査員が言っていた、的を射ているなと思った言葉が「コンペに送ってくる人は、まだ食えてないから応募してくる。SNSでバズって流行っているイラストレーターはここに送ってこない」と。そうそう!あたりまえなのだけど、なんか大切なことを言ってくれたと思った。
そしてコンペでは「イラストとして完成度が高いか?」「商業的ジャンルをまたいで活躍できそうか?」などが基準となり受賞作品が選ばれている(はず)。
そこに私は入れる気があまりしないのだけど……それでも審査員の好みをリサーチして、少しでも可能性がありそうだったら応募している。
コンペで強いのはやはり、生き物が描ける人。動物や人物。昔の少女漫画をみると、たとえば「これは矢沢あい先生だ!」と一目でわかるように、イラストレーターでも、その人ならではの人の描き方や表情がゆたかに表せたらもう勝ち!なのです(これも私分析)。
でも、そこへの追求には興味が、あまり持てな~い!
今も、自分の「らしさ」をどう高めていって、より色んなお仕事にチャレンジできるようになるかを時々ふと考えあぐねています。加えて、AI時代だからなおのこと。人が絵を作ることって今後も需要ある?デジタル上だと、本当にあと数年で消えそうな職業だな?などとも思う。
……と、理詰めをすると色々お先は課題も多いのですが、一方で、最近ビジネス現場でバリバリ働く友人に「アートとして純粋に創作を楽しんだ作品は、社会に向けてなにか意味やメッセージを込めているのか?」とふと聞かれたことも。そういう真面目な質問は日常生活であまり受けないから新鮮な体験でした。
巡り巡って……特にない、と答えた。
でも、純粋に好きだから十何年も続けているのだろう。紙を切って貼っているだけなのだけども、それをもって、案外いろいろ探訪して生きている様子を周りの人もおもしろがってくれたら、それでいいな~っていうくらいだ、と言いました。
私自身が、世に生きる、自分の美意識のようなものやしなやかな信念を持ち続けて生きていく人に励まされて生きているから、願わくはそういう循環の一部になりたい。
ずーっと絵だけで食べていくというのは難儀だけども、色んなバランスを合わせ見ながら、どんなことがあってもやっぱり続けていくだろうな~とあらためて思ったこの頃でした。
龍山千里 | Chisato Tatsuyama
1991年神奈川出身、2020年よりフランス在住。日本の織物産地でテキスタイルデザイン職を経て渡仏、2024年秋よりフリーランスとして活動を開始。コラージュの手法を用いてイラストレーションやデザインを制作する。
instagram @chisato_tatsuyama
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